2020年にリリースされた最高の楽曲達

売り出し中のミュージシャンの中で最も注目すべきは、世界でも有名な楽曲『WAP』でカーディ・Bとコラボし、その後またビヨンセと共に登場して2020年にその実力が認められた、ミーガン・ジー・スタリオンです。BTSとバッド・バニーも過去最高の人気を博し、ハリー・スタイルズのヴィンテージ・ロックの美学は更なる進化を続けました。

テイラー・スウィフトのアコースティックなドリーム・ポップから、マイリー・サイラスの煌びやかな歌唱、そしてザ・ウィークエンドの豊かなシンセ・ポップ、真実を語るカントリー・ミュージックやインディー・ロックも。骨太なラップのリアルさ、そして一晩中続くハウス・ミュージック。例え家で一人踊っていたのだったとしても、2020年は過去のトレンドの再発見となった素晴らしい年でした。そのうち何曲かは私達の選曲にも含まれていますが、それ以外は見送られました。

それではこれ以上長くなる前に、こちらが私達の選ぶ2020年にリリースされた最高の楽曲達です。

ボブ・ディラン『キーウェスト (フィロソファー・パイレート)』

『ラフ&ロウディ・ウェイズ』には他の曲もありますが、ディランによるこの新曲がアルバムの中で最も力強く、悲観的な魅力を聴く者の耳に届けます。9分間のキーウェスト (フィロソファー・パイレート)で主人公の彼はフロリダを彷徨っており、フロリダ・ブルースを亡霊のようなハーモニカの音をバックに口ずさみながら、Key West is the place to be if you want to be everlasting(永遠の命を手にしたいのなら、キーウエストこそがその場所だ)と唸るのです。ヤシの木が揺れる楽園に居ても、彼の心にはまだDesolation Row(廃墟の街)が影を落としていて、犯人である彼は常に逃げる機会を伺っています。

クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズ『People, I’ve Been Sad』

ロックダウンや隔離を義務付けられた事で2020年は過去に類を見ない寂しい年となり、『People, I’ve Been Sad』は時の主題歌の役目を果たしました。クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズは最低限のシンセイザーと今にも泣きそうな声で、失敗や去り行く事、別れを英語とフランス語の歌詞で表現し、世界の今を完璧に歌い上げました。

一方でクリスは「You know the sensation.(この気持ちがわかるでしょう)」と歌った事で聴く者との間にある第4の壁を破いて見せます。私達は皆この気持ちがわかりますし、同時に寂しさや悲しさも感じられるでしょう。ですがもしかしたら、今を切り抜けるのにこんな曲があれば、少しだけ気分が良くなるかもしれませんね。

ザ・ウィークエンド 『ブラインディング・ライツ』

ファジーなシンセサイザーと跳ね回るビートをドラム・マシンで刻む『ブラインディング・ライツ』は、デュラン・デュラン以降で最高のニュー・ウェイヴ曲です。無視された着信や、運転しながら単純に何かを感じたいがためにスピードを出す描写、孤独感を表す光などといった、80年代ポップを代表する比喩をザ・ウィークエンドはたったの3分間で次々と登場させます。ですが本当の素晴らしさは彼の声と、80年代色に染まった叙情的な決まり文句「I can’t sleep until I feel your touch.(あなたに触れるまでは眠れない)」を歌って彼が歌詞に新たな命を吹き込んだ後でも、脳内に残ってやまない曲のメロディーなのです。

テイラー・スウィフト 『オーガスト』

アルバム『フォークロア』の目玉となる楽曲から、最高の歌詞を一つ選ぶのは至難の業です。「August drank away/Like a bottle of wine(8月は刻々と去っていった/ワインのボトルを空けるみたいに)」なのか、それとも「Cancel plans just in case you’d call/And say 『meet me outside the mall』(電話を期待して予定をキャンセルした/そして「モールの外で会いましょう」って言うの) 」なのか。いずれにせよ、『オーガスト』は酷い失敗に終わったひと夏のビーチでの恋を描いています。